世界経済論の予習中に食糧問題を考える

スクーリングで受講する世界経済論の参考文献である『戦後世界経済史』を読んでいます。アマゾンでのユーザーレビューでも評価が高い本で、なかなか読みやすいですね。

その中で1960年代に関する記述の中に、貿易構造の変化と人口爆発の影響で食料の需給バランスが崩れたという議論がありました。いわゆる途上国の人口増加が進み、1930年からの30年間で人工が倍増したとのことです。当然、人間が増えれば食料も必要になるわけで、それをどのように賄うかは大きな問題になります。この辺は人口論などで触れられる内容になるのかもしれませんが、ちょっと気になる記述でした。

というのも、日経ビジネスの7/19号の特集が「食料がなくなる日」というタイトルで、2050年には世界の人口が現在の68億人から91億人に増えると予想される一方で、農耕地の面積はもうほとんど増やすことができないのでこれからどうなる?といった内容でした。たまたまこの記事を読んだ後だったので、偶然、目にとまったのですが、日経ビジネスの特集内容と合わせて考えてみると、これは確かに大きな問題であると感じました。

この特集の主な議論は、予想される食糧危機に対する種子メジャーの現状と日本の無策に関してです。種子メジャーは積極的に遺伝子組み換え食品の開発に取り組んでおり、研究開発を加速するためによく使われますが、M&Aを繰り返しているということも紹介されています。要は遺伝子組み換え食品の真剣な議論はもう避けて通れない道なのに、日本ではそういう意識が足りないという警鐘だと言えます。

日常、大豆やとうもろこしを使った食料の原材料のところを見てみると、「遺伝子組み換えでない」という記述があります。つまり、遺伝子組み換えの原材料を使っていないという表示ですが、遺伝子組み換えによる悪影響が払拭できていない現在では、この記述があるとないとで大きな違いが出てきます。日本では遺伝子組み換えである原材料を使った商品を目にすることはほぼないと思いますが、気になるところではありますね。

ちなみにこの特集内の試算によると、遺伝子組み換え食品を拒否するのであれば、10年後の食卓はこうなるそうです。

・朝食
ご飯茶碗一杯(精米76g)、焼き芋2本(233g)、ぬか漬け1皿(野菜90g)

・昼食
米粉パン1個(米粉47g)、蒸かし芋1個(じゃがいも半分84g)、果物(りんご1/4相当)

・夕食
ご飯茶碗一杯(精米76g)、粉ふきいも1皿(じゃがいも1.5個168g)
焼き魚一切れ(魚の切り身81g)

まぁ、飽食のカロリー超過時代にはいいくらいだと自虐的になってみるのもいいかもしれませんが、現実にこれが毎日続くとどうなのかということを考えると・・・

さて、今回の特集では、私のいままでの浅知恵を覆すような内容が紹介されています。そのひとつが、日本で家畜の飼料に使われるとうもろこしは100%輸入に頼っていて、その85%が遺伝子組み換えのとうもろこしという事実です。スーパーで一所懸命に商品をひっくり返して確認しても、大雑把に言ってしまえば「牛肉、豚肉、鶏肉の85%が遺伝子組み換えの飼料で育てられている」ということは書いてなく、知らないうちに遺伝子組み換えの食料を間接的にであれ、口にしているというわけです。結局、どこで気にしようとも最終的にはすでに何らかの形で食しているという知られざる現実があるのですね。さらに言ってしまえば、日本は世界最大の遺伝子組み換え作物の輸入国だそうです。

とりあえず、遺伝子組み換えについての是非を論じるほどの知識を持ってませんので、これ以上は深入りしません。今日(7/25)までであれば駅の売店で売っているはずなので、気になる方は買ってみてください。大きな書店に行けば、バックナンバーもあると思いますので、明日以降でも手に入ると思います。

しかし、遺伝子組み換え食品の最大手である米国モンサント社の副社長のインタビューも載ってましたが、合理的に考えれば、人口爆発によって増えた食料の需要を誰が充足するのかという議論に対して、生産性の向上という答えは間違ってませんし、現実問題として農耕地が増やせないのであれば、今のうちから遺伝子組み換えを含めて手を打つ必要があるのは否定できません。

こういった身近な問題に対する考え方をテキストやスクーリングで身につけることができる環境にあることは恵まれていますので、諸問題を見逃さずに積極的に取り込みながらしっかりと消化していけるようになれば、私の学生生活も本物と言えるでしょう。

それでは。

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