ドラッカーとブラック・スワン

20歳前後の頃からの数年間に、経営学者のP.F.ドラッカーの本を読んでいた時期があります。そんなわけで我が家の本棚には10冊ほどドラッカーの著書があります。先日、同僚が急にドラッカーを読みたいと言い出したものですから、本棚から出してちょっと読んでみたところ、おもしろい発見がありました。

ドラッカー選書2『[新訳]創造する経営者』という本があります。この選書シリーズはドラッカー亡き後に発行されたドラッカー名著集にとって代わられていると思いますが、ここに興味ある記述を発見しました。ちょっと引用します。

「企業は自然現象ではなく、社会現象である。そして社会現象は、正規分布(ガウス分布)しない。」

P.F.ドラッカー『[新訳]創造する経営者』上田惇生訳、ダイヤモンド社、1995年、19ページ

これは近年の話題の書『ブラック・スワン』でいわれていることと被ります。『ブラック・スワン』の著者、ナシーム・ニコラス・タレブはいわゆる正規分布でものごとの発生確率を予測することの無意味さを主張しています。ドラッカーが上述の書を書いたのが1964年ですから、その当時からブラック・スワンの存在を見抜いていたということですね。

勉強不足ですので、この手の確率論がどれくらい昔からあったのかということはわかりかねるのですが、このことがかなり昔から言われていて、しかも近年、同時多発テロ、リーマンショックなどで現れているにも関わらず、日々の生活、そして仕事においても正規分布でものごとを考えてしまうというのはどういうことなんだろうと考えさせられました。

もちろん、ものごとのたいていのことは正規分布に当てはまると思うので、むりやりにブラック・スワンの存在を強調することもないとは思いますが、心のどこかでは常に意識しておかなければいけないなという結論に至っています。

それでは。

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