本の紹介『小泉進次郎の闘う言葉』

新党新党言ってもですね、やる人が新しくないからですね。

常井健一 『小泉進次郎の闘う言葉』 文春新書、2013年

夏休み中に本読むぞ計画のもと、先に紹介した『タモリ論』と同時に買った本です。果たしてこちらの評価はどうでしょうか?

筆者は元朝日新聞記者で、留学を経てからフリーライターに転身した人です。彼が小泉進次郎に密着取材で書き上げた本です。本人曰く、読者が小泉氏と一緒に回ったような感じになるように工夫したとのことで、非常によく書けていると思います。

小泉進次郎氏については、解説不要でしょう。将来、首相になることを多くの人から期待されている政治家です。お父さんに似たのか、言葉で人を動かすことのできる政治家ですね。

著者が本書で何度か述べているように、実は進次郎氏の口から具体的な政策を聞くことはあまりありません。何々をしなければいけない、といったフレーズが多用されていますが、具体的な手法ということになるとなかなか聞くことができません。ただ、議員歴3年の言ってしまえば見習いの政治家です。まだ31歳です。そんな若者から具体的な政策が語られるのも逆に怪しいかもしれません。

そんな進次郎氏ですが、自分の役割は認識しているようで、宣伝部長に徹している側面も見えます。自分が出て行くことで人が集まり話を聞いてくれる。もっとも彼目当ての熟年女性陣は話を聞いてないようですが、それでも客寄せパンダを喜んで引き受けているようですね。

彼は当意即妙という言葉が非常に似合う政治家だと思います。冒頭に書いたフレーズもそうですし、本書内で出てくる事例でもそれがうかがえます。聴衆を話に引き込むという政治家として大事な資質を持ち合わせているようです。

さて、この本から伝わってくるところで非常にいいなと思った進次郎氏の特徴は2点あります。ひとつは、若者世代を代表して発言しているところです。これから少子高齢化は不可避でありますが、他の議員があえて口にしない社会保障費の見直しについて、堂々と言及しています。それは他でもなく、いま高齢者の負担を増やしてでも改革しておかないと、若者さらにはこれから生まれてくる子どもの世代でとんでもないことになるからです。少数意見でもいい、党内で採用されなくてもいい、それでも言わなくてはいけないことは言う、という姿勢は素晴らしいと思います。また、街頭演説で高校生を見つけては声をかけ、いまは選挙に行けないけど、何年後には投票に行こうと声をかけている。非常に頼もしいですね。

もう一点は被災地のことをよく考えている点です。自民党の青年局の活動で、毎月11日には東北の被災地に行っているそうです。これは彼以外にも若手の議員が行っているようですが、そういうところの声を直接聞いて東京に持ち帰っているそうです。アベノミクスによる経済成長大いに結構、しかし被災地の人たちは明日の生活のために必死なのが現状だそうで、そういうところに光を当てて手をさしのべるのが政治だと述べています。

これからの20年、30年に向けてこういった考えは重要だと思います。

父親譲りの劇場型政治と揶揄する向きもありますが、私は劇場型政治好きなので大変楽しく読むことができました。ということで、堂々の満点評価です。

評価:★★★★★

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