本の紹介『「ひらめき」を生む技術 』

アイデアは無限です。

伊藤穰一『「ひらめき」を生む技術』[Kindle版]、角川学芸出版、2013年

著者のJoi(ジョーイ)さんこと伊藤穰一氏は、私が一番最初に就職した会社の当時の社長で、今はマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボの所長です。

とにかく新しいことが大好きで、アメリカで流行っているものをいち早く日本に導入するなんてことをよくやっていました。その点では孫さんと似ているところがあり、実際にYahoo!を日本に持ってこようとして孫さんに負けた、なんて噂も聞いたことがあります。

が、当時の部長が飲み会で言っていたのが「Joiがやっていることは新しすぎて、儲かったためしがない」ということで、そういう意味では時代を先取りしすぎている感じがありますね。その結果、今の職に就いたということなんでしょうけど。

さて、本の内容は、メディアラボでいろんな人を招いてJoiさんと対談した際の話を文章におこしたものです。日本でも流行ったアメリカのドラマ「LOST」を制作したJ.J.エイブラムス氏が出てくるなど、豊富な人脈を使って対談をしているようです。

アイデアは考えているだけでは生まれてきません。いろんな思いつきをどうしてなのかと考えたり、試したりしてみて形になるものです。そのためのヒントが載っている本です。

Joiさんはセレンディピティというキーワードを紹介しています。Joiさんは、日本語では「ひらめき」「偶然の幸運」と訳されることがあり、ラッキーな人はどこにいってもいろんな発見、出会いがあるととらえられていると言います。しかし、それはその辺にたまたま転がっているようなものではなく、柔軟な思考や広い視野を常に意識していないとセレンディピティはないと主張しています。

その文脈ですごく気になったのは、第4章のリンクトインの共同創業者で会長のリード・ホフマン氏が言ってたことです。ビジネスではよく、プランAがダメだったときにプランBを用意しておくなんてことが言われていますが、それはプランZくらいまで用意しておかないと意味がないとホフマン氏は言っています。加えて、想定外のことが起きたときに大きく方向転換することも考えておかないといけない、と。

つまり、いま読んでいる他の本にも書いてありましたが、物事を自分の想定どおりに進むと前提すること自体が大きなリスクであるということですね。といった意味では、Joiさんのいうセレンディピティ、すなわち常に視野を広く持っていることが重要なのだと言えます。

アイデアをいかにして生み出すかについて、非常に有用な内容だと思います。

評価:★★★★☆

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