本の紹介『シグナル&ノイズ』

情報の海を泳ぎ切るには?

ネイト・シルバー『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』[Kindle版]日経BP社、2014年

著者はアメリカ大統領選挙の結果をデータから推測し、2008年には50州のうち49州、2012年は50州すべてを的中させた人物です。また、『マネー・ボール』で一躍有名になったデータ分析ツールを開発した人物でもあります。

本書では天気予報、地震予知、スポーツの勝敗予想、経済予測などを取り上げながら、多くの情報の中にあるノイズを排してシグナルをしっかりとらえることが重要と述べています。

ビッグデータを活用して今まで気づかなかったことを可視化してビジネスに活かすというのは最近のトレンドであると言えますが、データはしっかりと分類しなければノイズに惑わされて有効な判断ができないということを再認識いたしました。

本書内でキツネとハリネズミというメタファーを使っている部分が印象的でした。キツネは視野を広く持ちいろんなアプローチを試みるタイプで、理論よりも経験を重視します。一方、ハリネズミは特定のモデルの構築を好み、それに絶対的な自信を持つタイプです。ぱっと見のわかりやすさから、政策ブレインなどはハリネズミタイプが好まれるようですが、著者によれば、予測上手なのはキツネタイプだとのことです。確かに多面的に分析をしていかなければノイズとシグナルの分類は困難ですし、情報化社会でより複雑性を増しつつある現代においては、ひとつの専門バカよりも総合的に高度な判断を下すことのほうが重要なのかもしれません。

単なる統計の本ではなく、データに対する姿勢などを説いているため、充実した内容と言っていいでしょう。


評価:★★★★☆

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