本の紹介『ファスト&スロー』

Kindleでの読書は楽しいですね。

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上)(下)』[Kindle版]村井章子訳、早川書房、2012年

上下2巻に分かれております。いま履歴見たら、上巻買ったの2013年の1月1日ですね。なんちゅう日に買っておるんじゃ。でもって、中途半端に読みっぱなしになっていて、昨年末にKindle端末を購入して再開して、そのまま下巻も読み切った次第です。ちなみに下巻の購入は2014年12月25日。なんちゅう日に買っておるんじゃw

カーネマンはもともとは心理学者で、その後、行動経済学への貢献が認められて2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。

ファスト&スローというのは、人間の思考のシステムのことです。カーネマンは人間の思考をシステム1とシステム2に分類しています。すなわち、前者は直感的に判断するときに使われる部分で、後者は熟考するときに使われるものです。

システム1は非常に速い速度で決断を行うが、時として合理的なものとは言えない場合があります。例えば、何かを急に質問されたときにとっさに答えてしまうようなものです。なぜかは分からないがその答えを出してしまったというものです。

一方、システム2は非常に合理的に判断しますが、いかんせん遅い。ただし、遅い分だけ説得力があるってわけですね。人間はこの両システムを無意識に使い分けているというわけです。早押しクイズは直感的に答えるが、そうでないクイズは時間かけて考えるといったイメージでしょうか。

その他の議論として、経済学的な合理的人間モデルを引き合いに出しています。本書内では「エコン」と名付けていますが、経済学では無差別曲線というものがあり、その曲線上であればどこでも効用は同じとしています。例えば、教科書的に言えば、リンゴの数が5個から3個に減っても、みかんがその分2つ増えればその人にとっての効用は同じことというわけです。しかし、カーネマンはここに疑問を呈するのです。

例えば、ある2人がいて、それぞれ1万円の収入を得たとします。片方はもともとの所持金が1万円、もう一方は100万円持っていたとして、両人ともに同じ効用でしょうか?カーネマンは違うと言います。同じ額でももともとの基準(彼が言うところの「参照点」)が異なるので、無差別曲線のようにはいかないと主張します。人間はその時々の状況や思い込みなどからいろんな判断を行う(エコンの対義としての)「ヒューマン」であるという意見です。

その他、記憶する自己と経験する自己などかなり盛りだくさんの内容ですが、これはかなりオススメの一冊と言ってよいでしょう。なお、読むのはそれなりの時間がかかると思います。


評価:★★★★★

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