本の紹介『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』

GとLの2分法。

冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』[Kindle版] PHP研究所、2014年

著者は、かつて産業再生機構のトップを務めた人です。いまは複数企業の社外取締役や北関東から東北でバス会社運営をしているみちのりホールディングスの取締役です。

この本のポイントはなんと言っても、GとLの2分法に尽きます。Gは「Global」、Lは「Local」で、それぞれのやり方があるという主張です。つまり、「ローカル発のグローバル企業を」という政府の方針は間違いであり、地方企業はローカルに特化し、グローバルな展開は大企業に任せればよいというものです。

冨山氏はローカル企業にはMBA級の人材は不要で、そういった意味ではローカル企業で成功できる人材は少なくないと言います。そういう人材を育てていけば、地方経済の活性化は可能だとしています。

一般的に言われているような地方では仕事がないというのは実態に合わないとしています。実際にみちのりホールディングスでは慢性的な運転手不足に悩まされているとのことです。自動車が必須の地方では、高齢化で運転ができなくなるとバスがないと生活が成り立たないため、需要は非常に大きく、かつ地元に溶け込んでいれば競合他社の参入がないため、利益率はかなり高くなるそうです。なので、そういった企業を多く生み出せるような政策が必要という主張です。

確かにどこもかしこもグローバル一辺倒だからこそ、うまく行かない部分があるのかもしれません。どの企業も楽天、ソフトバンクのやり方で成功するとも限らず、それぞれにあったやり方を見つけるのがベストなのかもしれませんね。といった意味では、非常に勉強になった一冊でした。

評価:★★★★☆

コメント

このブログの人気の投稿

通信三田会からの誘い

2021年度慶應義塾大学卒業式。そして卒業について思うことと心境の変化

卒業式エピソードの続き