本の紹介『中曽根康弘』

今年の5月で御年98歳です。

服部龍二『中曽根康弘』中公新書、2015年

言わずと知れた、元総理大臣中曽根康弘氏について書かれた本です。いまどきの若者はどうか知りませんが、日本人のほとんどが知っている有名な政治家の1人と言っていいでしょう。副題は「「大統領的首相」の軌跡」となっているように、審議会を多用するなど、それまでとは一線を画したスタイルを採用していたそうです。

総理大臣時代は記憶に残っているのですが、その出で立ちからのことは意外なものでした。まず東京帝国大学を出て内務省官僚であったのは知っていましたが、太平洋戦争時に戦地に赴いていたことは知りませんでした。向かったインドネシアで「阿鼻叫喚の地獄」を体験し、それが政治家を志す一因となったようです。本書では日本の首相で唯一、戦地での激戦経験があると書かれています。

その他、田中角栄と同い年、当選も同期であったが、いわゆる「吉田学校」に属し主流であった角栄と違い、反主流であったので冷遇が続いたことなど、新たに知ったことが多かったです。そんな中、風見鶏と批判されつつも頂点に上り詰めたのは、上記の戦争体験、つまり最前線に出向く庶民である多くの部下を失ったことが、背景にあったのかもしれません。

政治的にほ保守本流で、見たままです。外交関連では、アメリカ(レーガン)、旧ソ連(ゴルバチョフ)との関係強化のみならず、韓国(全斗煥)、中国(胡耀邦)とも関係を作った一方で、靖国神社の公式参拝をした初の総理大臣であったりと、信念に基づいて行動する政治家でありました。

その他、原子力の平和利用推進(その結果としての福島原発は皮肉ですが)、そして専売公社と国鉄の民営化など、長期政権でやったことはかなりゴッツイと言って過言ではないでしょう。

内容はけっこう面白いのですが、政治がネタの本なので好き嫌いが分かれると思います。という意味も含めて、星3つで。

評価:★★★☆☆

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