本の紹介『ムーンショット!』

砂糖水の販売をやめて、世界を変えることを選んだあの人です。

ジョン・スカリー 『ムーンショット!』 川添節子訳, パブラボ, 2016年

著者のスカリーはジョブズの後任のアップルCEOで、ジョブズに誘われてペプシからヘッドハンティングされ、そのジョブズをクビにし、その後、自らもクビになったという人物です。ジョブズが彼をスカウトするときに使った口説き文句は有名ですね。

ムーンショットとはシリコンバレーの用語で「それに続く全てをリセットしてしまう、ごく少数の大きなイノベーション」のことです。適応型イノベーターと適応型企業がそれを担っていくであろうという内容です。

現代はどんな技術でもコモディティ(日常商品)化するまでの時間が短いと、著者は指摘しています。例えば、彼がペプシ時代に手掛けたマウンテンデューはブランド確立に15年かかったが、シャオミなどの新興スマートフォン企業は2〜3年で大きな販売数にいたっています。あっという間に大きく成長するが、あっという間にコモディティ化します。なので、特化型企業、例えばシャオミがスマホ以外のことに興味も示さず、それに対応できなければ、そのまま終了というわけです。

そんな中で、アップルのジョブズ、マイクロソフトのゲイツ、Amazonのベゾス、テスラのマスクなどの創業者を適応型イノベーターとして紹介しています。そもそもイノベーション自体が「既存の技術同士を新しく結合させたもの」と定義されてますので、言葉どおりとも言えます。

その他、顧客に焦点を合わせることが大事ということも書いてあります。

私自身の経験からも、コモディティ化はものすごく早く感じることがあります。特にネット界隈で仕事をしていると、去年の今頃に流行ったようなキーワードが、いまでは誰も言わなくなっているなんてことはザラで、スピード感持ってバシバシさばいて行かないと収益機会を失うことになりかねません。

とは言え、風見鶏のごとく、それらのブームに乗ろうとしていてはどれだけ人とカネがあっても追いつきません。しかし、消費者はそんな事情はお構いなしです。まぁ、自分が消費者の立場であればお構いなしでしょうから、そこは仕方ないのですが、それに乗らないといけない状況も出てくるでしょう。そういった状況ではムーンショットが期待されます。

そんな簡単にムーンショットが出てくるわけではありませんが、その心構えは持っておくに越したことはなさそうです。

ムーンショットの概念以外は特筆することもないですが、いくつか改めて「ほほう」と思ったところがあったので、星は4つとしておきます。

評価:★★★★☆

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