本の紹介『Who Gets What』

著者はノーベル賞受賞者です。

アルビン・E・ロス 『Who Gets What -マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学-』[Kindle版] 櫻井祐子訳、日本経済新聞社、2016年

2012年に「安定配分理論と市場設計の実践」の研究により、ノーベル経済学賞を受賞したロス教授の本です。文末の解説は、ロス教授の教え子にして、スタンフォード大学准教授の小島武仁氏です。ちなみに日経新聞で書評を書いていたのが、前回の本の紹介で取り上げた坂井先生です。

ロス氏は腎臓移植患者とドナーのマッチングや、医者と病院の求人のマッチングを提案して実現した人です。これまでの経済学では需要と供給のマッチングは価格であるとしていますが、腎臓移植については価格は無関係です。逆に値段がつくと法を犯すことになります(臓器売買)。腎臓移植では生体の相性がマッチメイクの要素となりますので、これが研究対象となります。そしてマッチメイキングを応用して、どのように制度を作っていくかがマーケットデザインです。

マーケットをどうデザインしていくかは今後、応用がかなり進む領域ではないかと思います。これまで1対1でのマッチングでうまい組み合わせが見つからなかったケースでも、適切にマーケットをデザインすればいくつもの最適な組み合わせが生まれる可能性があります。これは日々の業務でも活かせますし、実際に不完全ながら、現在のプロジェクトはこの考えをもとに進めています。

マーケットデザインは高度な数学の元に成立しますが、本書では数式は出てきません。考え方を紹介したものと言えるでしょう。腎臓移植の他に、学校選択の問題などが事例として紹介されており、なかなか面白いです。

星4つです。

評価:★★★★☆

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