本の紹介『サイロ・エフェクト』

サイロとは牧場にある草をためておく塔です。

ジリアン・テッド 『サイロ・エフェクト』[Kindle版] 土方奈美訳、文藝春秋、2016年

筆者は執筆時点で、英フィナンシャル・タイムズのアメリカ版編集長を務めています。もともと人類学を専攻しており、その視点から金融や経済を見ているという点がなかなかユニークです。

さて、サイロとは冒頭にも書いたとおり、牧場で冬に備えて牧草などを貯蔵するための施設です。縦長の構造から、縦割り組織のメタファーとして使われています。よって、縦割り組織がいっぱいある企業は、サイロがいっぱいあるということになります。

本書ではサイロがたくさんあり失敗した事例と、サイロを作らないようにして成功した事例が紹介されています。失敗例としてはニューヨーク市役所、UBS、ソニーなどで、成功例はFacebook、起業家からシカゴ警察に転じた人物、リーマン・ショック時のヘッジファンドがあげられています。

縦割り組織の弊害は誰もが認めるところと思います。しかし一方で、私自身の考えでは、組織を究極に仕上げていくとそれは縦割りになると思っています。これはライフワークである社会システム理論を学んでいく中で行き着いた結論で、例えば人体がいい例です。人体は多くの臓器からなっていますが、それぞれは独自の機能を持っています。例えば、酸素の取り込みは肺しかできませんし、血液を体におくるのは心臓の機能、食物の消化は胃、栄養の吸収は腸など、それぞれ縦割りです。それを脳という統制器官がまとめることで成立しているわけです。なので、人体、もっといえば動物の体こそが究極の組織構造であり、その中身が縦割りなので、組織を極めると縦割りになるという論法です。もっともまだ研究途中ですので、これが結論とも言えませんが、現時点ではそういう考えを持ってます。

内容を戻しますが、サイロが堅固になってしまうと組織の活力が失われますので、そういった状態に陥らないような仕組み作りが必要です。まぁ、それが難しいのではありますが・・・

そのためのヒントが満載かというとそうでもないですが、事例は参考になるんではないかと思います。


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