本の紹介『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―』

内容がエグすぎます。

豊田正義 『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―』[Kindle版] 新潮社、2009年

これは2002年に北九州市で起きた事件のルポです。以前からAmazonのウィッシュリストには入れていたのですが、10/15にフジテレビの「ザ・ノンフィクション」でこの事件に関する放送をやっていたのをたまたま観て、あまりの内容に即ポチした次第です。番組では主犯の夫婦の息子が顔だけ隠してインタビューに答えています。

詳細はネットにいくらでも情報が転がっていますのでそちらをみていただくとして、とにかく最初から最後まで気持ち悪い、むかつくといった精神的症状のオンパレードです。よくもまぁ、これまでの状態が実現するなぁと不思議に思うばかりです。

大まかにまとめると、主犯の1人である男が天才的な詐欺能力とでも言うのでしょうか、その能力を使って周囲の人間を洗脳して、家族同士で殺し合いをさせるという、もう想像を絶するような事件なわけです。実の親、配偶者、そして子どもにまで手をかけてしまうという、常識の範疇では思いもつかないようなことが行われた凄惨な事件です。

結局、7人が殺害されたわけですが、死人に口なしをいいことに、ものすごいストーリーをでっち上げ、殺人事件を扱う法廷にも関わらず、傍聴者を笑いの渦に巻き込むという、これまた信じがたい事象も起きるなど、主犯格の男のとんでもない能力のために異常なできごとが連発する事件です。

事件は殺害された最初の被害者の娘が監禁から逃げ出し、一度は逃亡先の祖父母の元から連れ戻されたものの、洗脳されなかった祖父が2度目の逃亡を機に警察に駆け込んだことから発覚します。主犯の男とその妻は完全黙秘で裁判が滞りかけていましたが、その逃亡した女子が思い出したくもないであろう悲惨な事件を語り始め、それで我に返った妻が態度を変えて全てを告白したところから一気に進展します。もし妻が洗脳されたままだったら、迷宮入りしたと思われます。

本書では事件の顛末のほか、主犯の1人である妻と著者の手紙のやり取り、刑務所での面会の様子などが書かれています。本人は洗脳されたとは言え、自分のやったことは一生かけてでも償っていくということを表明しているようで、時間が経つにつれて人間らしい表情も取り戻すなど、そこは本書の中でも少ない救いの部分です。ただ、前述の番組では、両親がどれだけ改心しようとも、自分は絶対に許さないと息子が言っていたように、やはり事件としては救いのないものなのかもしれません。

この事件の教訓として、人間はちょっとしたきっかけからまったくの別人物になってしまうというのは、覚えておいても損はないでしょう。日々の生活の中で家族や仕事の関係者など、注意して観ておくと事態が悪化する前にケアできるかもしれません。


評価:★★★★☆

コメント

このブログの人気の投稿

通信三田会からの誘い

2021年度慶應義塾大学卒業式。そして卒業について思うことと心境の変化

keio.jpの登録