本の紹介『宇宙を織りなすもの』
これは個人的には年に1度の大ヒットです。 ブライアン・グリーン著、青木薫訳 『宇宙を織りなすもの』(上下巻) 草思社文庫、2016年 毎年恒例のゴールデンウィーク書店巡りを今年は実施しなかったので、出かけついでに寄った新宿の紀伊国屋書店で見つけた本です。 著者は物理学者で、以前に他の宇宙関連本でもヒットを飛ばしたようです。これは宇宙論をかじっている身から言うと、かなりの大当たり炸裂でした。上下巻で1,000ページを超えますので読むのはそれなりの時間がかかりましたが、時間をかけた価値が十分にあると言ってよいでしょう。 内容自体もかなりいいのですが、タイミング的に基本的な宇宙論をひととおり触れた直後というのもよかったです。すなわち、今まで読んだものを復習しながらまだ学習前の理論に触れることができました。その理論が超ひも理論という、これまた意味不明な理論なのでこれから苦労すると思いますが・・・ それ以外にも不確定性原理やらパラレル宇宙やら、重力は非常に弱い力であるとか、一般人の思考では完全に理解不能な世界が展開されており、その辺と格闘しながらの読書でした。重力についてはゼムクリップに磁石を近づけると容易に持ち上がるくらいの力しかないという例えで説明してましたが、地球の重力がわずかの力しかないというのもやや違和感がありました。しかし、最近はなかなかそういう格闘系の本とも出会いませんので、非常にいい刺激にはなりました。 それにしても、宇宙はどのように始まったのかという点を突き詰めていくと、神学論争にしか行き着かないような気がしてきました。物理学者の皆さんは「神の創造物」というのは頑なに否定しますが、私のような素人には神以外に誰が作れるのかというのが早々に頭を巡ってしまいます。 評価は光の速さと同じとします。 評価:時速10億8千キロメートル