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本の紹介 『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』

近年で最も勝った監督であり、最も嫌われた監督です。 鈴木忠平 『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』 文藝春秋、2021年 落合氏は現役時代からロッテファンでなければ中日ファンでもなかったのですが、個人的にずっと応援していた選手でした。皮肉にもジャイアンツに来る頃には私が千葉ロッテファンになっていたという。 監督時代は8年間ですべて3位以内、4回のリーグ優勝、5回の日本シリーズ進出、1回の日本一と文句ない成績と言っていいでしょう。勝つことを求められて監督に就任し、上記の成績を抑めるも、勝ちはするがつまらない野球、ファンサービスがなってないと実質解任されるという、いかにもオレ流。ただ、落合氏が言うのは、勝つことが最高のファンサービス。確かにそうですね。 YouTubeで選手たちが口々にオーソドックスな野球と言っていたとおり、確実に点を取りにいって堅い守備力で逃げ切るという、王道の野球を貫いた監督時代でした。しかし、手に汗握る投手戦ほど、見ていてつまらない試合はないですからね。そりゃあ、球団としてはファンサービスがなってないと言いたいでしょう。 そして、口を閉ざし本音を語らず、記者達からも嫌われていたが、懐に入ってくる記者には心を許す、そんな人物だったようです。そんなわけで、単独取材を何度も試みた筆者はそのうち移動のタクシーにも同乗できるような関係を築いたという次第です。 当時、大ベテランで特別扱いだった立浪選手の守備力の衰えをいち早く察知して、森野選手を鍛え上げてレギュラーにする、序盤から打たれまくっている状況で投手ではなく谷繁捕手を交代させるなどのベテランが激怒しようがお構いなしの忖度なしの選手起用の裏側などが克明に綴られています。 中日担当になったのが落合監督就任とほぼ同じで、先輩記者から落合の取材はするなと脅されていたにもかかわらず、入社当時の大先輩の言葉を守って取材を続けた結果がこの本なのでしょう。その大先輩も社内では浮いていたがスクープ連発の敏腕だったとのことで、その道を究めんとする先達の意見は重要なのはどの世界でも同じのようです。 それにしても、自分たちの感情にまかせて、嫌いだからと取材をしないような記者は何様なんでしょうね。記者の本分を忘れているとしか言いようがありません。最近のテレビ、新聞、雑誌はくだらないものばかりですが、本物の記者が作った...

本の紹介『時間は存在しない』

時間が存在しないなんてことがあるのでしょうか? カルロ・ロヴェッリ 『時間は存在しない』 冨永星訳、NHK出版、2019年 筆者はイタリアの物理学者です。本屋に並んでいたのは知っていたのですが、通勤途中の電車で読んでいる人を見かけたので、勢いでアマゾンから注文。 私たちが生きる時間の流れがひとつではない、そう言われるとかなりの違和感を抱くのが普通のことかと思います。しかし相対性理論で考えると、時の流れを統一する基準がないということになります。これってなかなか理解できませんけど(私も詳細まで理解しているわけではないですが)、意外に身近に?感じることができます。例えば、最近のこちらのニュースです。 東京スカイツリーで一般相対性理論確認 東大など研究グループ 相対性理論によると高速で動けば動くほど、または重力がかかるほど時間の進みが遅くなります。まぁ、高速で動くのと重力がかかるのは同じことになるんですが、上記のニュースではスカイツリーのてっぺんの方が地上よりも重力が少ないので、時間の進みが早いということが実験でも検証されたというわけですね。時空の歪みです。 他に身近な例では人工衛星がありますね。人工衛星が静止軌道に乗るためには、地球の自転と同じ速度で動く必要があり、それは時速2万4000キロメートルです。言ってしまえば、地球上の人も同じ速度で動いているのですが、相対性理論は相対性を問題にするため、地上の人が止まっていて人工衛星が超高速で動いているという解釈になります。で、結果的に地上との時間差が生じるために、GPSなどで使われる通信衛星は自動的にその誤差を補正するため時間の進みが地上とは異なるように設定されているのです。 ということが実際に起きている。では時間の流れは同じとは言えないではないかというのが本書の提起する疑問です。この疑問について、過去の哲学者の考え方であるとか、物理学的にはこうなるとかいうことを論じています。 普段の生活で重力がかかるかからないで時間の流れが違うといったことは考えませんが、そういった考え方、そしてそこから出てくるエントロピーの考え方は非常に面白いと思います。そのような思考方法を日常業務なんかにも適用できないかな、なんてことをおぼろげに考えていたりします。違った視点から物事を眺めてみると日々の生活にもいい刺激になりますし、巣ごもり生活のお供にし...

本の紹介『独ソ戦』

けっこう前に買ったまま、なかなか進みませんでした。 大木毅 『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 岩波新書、2019年 昨年、話題になった本です。結局、昨年の出版分を対象にした2020年新書大賞を取った本です。新書大賞のページは こちら 。当初は独ソ戦のいままでの見方を覆すといった謳い文句で人気を獲得していたくらいの認識でしたが、まさか大賞を取るとは。でも、実際に面白かったです。 いままで東西冷戦時のプロパガンダに紐づけて論じられることの多かった独ソ戦ですが、実際には歴史で、特に日本の歴史で学ぶようなものではなく、もっと幼稚で悲惨なものだったというのが主な内容です。大きい戦いの作戦についていくつか触れられていますが、意外にも事実はショボい作戦だったとか、たまたまうまくいったとか、勝手に思い込んで自滅したとか、そんな内容です。日本では当時の日本軍の精神論について批判的に論じられることが多いと思いますが、本書の内容を見る限りでは大差ありません。一部の指導者や軍の理想が先行して、ろくな戦い方をしていないというところは万国共通なんですね。特にドイツの場合は人種的な絶滅戦争という側面も持ち合わせていたわけで、そういった信念が最終的に大きな被害をもたらしたというのは悲劇でしかありません。 歴史は常に動くというか、新たな検証結果が出てくると教科書に載るものが変わるのはよくあること。それ自体を否定するのではなく、なぜ検証結果が変わったのかといったことや新たな事実に対する中立な視点からの再理解は重要です。一時期、鎌倉幕府はいい国作ろうではなくなったみたいですが、いまは1192という解釈もありということになっているようですし、検証しつくしたとも言える過去のことすらそうですから、この100年間の出来事なんてなおのこと新事実が出てきてもおかしくないですね。 そういった意味では、大学の教育の現場でもずっと同じ教科書を使っているのはよくないことですね。別に他意はありませんけど。 評価:★★★★☆

本の紹介『イノベーターズ』

当たり前のように使っているコンピュータにも歴史ありです。 ウォルター・アイザックソン 『イノベーターズⅠ・Ⅱ』 井口耕二訳、講談社、2019年 コンピュータやインターネットそのもの、そしてそのサービスに関する先駆者を取り上げた本です。著者はウォルター・アイザックソンで、本ブログでも取り上げたジョブズの本やダ・ヴィンチの本を手掛けた人です。 1800年代初頭に計算機の基礎を作ったとしてラブレス伯爵夫人エイダさんの紹介から始まります。そこから電子計算機のプログラム、チップなどが登場する歴史を丹念に調べて書き記しています。コンピュータが進化する過程のキーマンが次々に登場。第二次大戦中、判読不能とも言われたドイツの暗号を読み解いたアラン・チューリングや、ガレージ企業の魁であるヒューレットパッカード、アップルのジョブズ、マイクロソフトのゲイツなどの聞いた名前も出てきますので、コンピュータ好きな人にはたまらない内容ではないかと思います。 この本を読んで意外に感じたのは、上述のエイダさんも含めて、女性が重要な立ち位置にいるということです。戦後のアメリカでプログラマーといえば女性の職業だったというのはかなりの驚きでした。時代背景もありますが、プログラムなど男のやる仕事ではないというのがあったようで、主に女性が携わっていたらしいのですが、それにしても意外でしたね。 ところで、コンピュータプログラムのバグという言葉がありますが、この言葉の語源が紹介されていてなかなか面白かったです。すなわち、ある夜にコンピュータが動かなくなって見に行ったところ、歯車のところに巨大な蛾(バグ)が挟まっていたために止まっていたそうです。そしてそれを取り除いたら(デバッグ)また動き出した、と。つまり、リアルな虫とそれを取り除いたというエピソードから出てきた言葉なんですね。諸説ありそうですが、これは面白かったです。 上下巻でそれなりの長さがありますが、ぜひ巣ごもりのお供にどうぞ。 評価:★★★★★

本の紹介『2050年のメディア』

(特にウェブ)メディア関係者必読の書です。 下山進 『2050年のメディア』 文藝春秋社、2019年 著者は元文藝春秋社の編集者で、現在は慶應義塾大学のSFCにて特任招聘教授として本書と同名の講座を立ち上げた人です。ちょうどインターネットメディアが立ち上がったころからのウェブメディアと新聞の盛衰を描いたものです。 私もウェブメディアの世界に足を突っ込んでから20年(本投稿を書こうとして数えたら、20年経ってるのに気づきました)。ちょうど本書のウェブメディア側のメイン対象となっているヤフージャパンが立ち上がったのとほぼ同時期にこの業界に入ってきました。その頃の歴史を振り返ることもでき、非常に楽しかったです。 ニュース媒体として大きな力を持っていた新聞が、ウェブメディアが登場し、そこにニュースを提供して莫大な利益を得た反面、次第にウェブメディアが力を持ってきて新聞の地位を脅かすというところから始まり、新聞社の独自ウェブメディアの立ち上げからネット版の有料提供という流れを追い、最終的にはウェブメディア側も変遷を余儀なくされるというところまで描いています。 ひっそりとではありますがこの業界に身を置く人間として考えさせられることが多く、また個人的にはウェブメディアの在り方というものを再考察していたところだったので、なおさら脳細胞をフル活動させた次第です。 そんな再考察のなか、おぼろげに感じていることがあります。すなわち、盛り上がるSNSなどの中身のほとんどが薄っぺらいということです。いろんなことで炎上していたりするものを見ますが、そんなもん少し勉強すれば分かることだろうとか、ちゃんと考えて書いているのかと思うことが多々あります。確かにネットは便利ですが、例えばWikipediaに書かれている数行で物事を正確に理解できるのかというのは疑問ですし、実際には無理でしょう。Wikipediaは便利ですが、あくまできっかけとしての情報止まりではないでしょうか?それが知識としての事実となっているようで怖いです。その思いを確信したのが、下記のヤフーの奥村氏の言葉です。 「答えはネットにはない。本の中にある」(410ページ) これはしっかりとした知識を身につけていないとネットでは生きていけないという警鐘の言葉ですが、まさにそのとおりであると思います。 いま...

本の紹介『レオナルド・ダ・ヴィンチ』

レオナルドと言えば、ディカプリオ? ウォルター・アイザックソン『レオナルド・ダ・ヴィンチ』 土方奈美訳、文藝春秋、2019年 著者はスティーブ・ジョブズの公式自伝を書くなど、伝記物では有名な人です。前掲書は読んでいますので、そういった意味では書店で目についたときに迷わず購入しました。分厚いカバーの上下2巻、読み応え抜群です。 レオナルド・ダ・ヴィンチといえば、「モナリザ」、「最後の晩餐」、ヘリコプターのスケッチなど多岐にわたる才能を持った人というイメージですが、実際にもそのとおりのようですね。科学の知識を芸術にも応用したという点で有名ですね。例えば、遠近法。有名なのはモナリザにおけるそれですが、それ以前にすでに他の絵画にも応用していたというものです。その他、光の当たり方による色の変化などにもかなり力を入れたようです。 ここで挙げておくべきは彼のものすごい観察力です。筆者によれば、動体視力が優れていたようで、トンボが4つの羽でどんな風に飛んでいたのかを把握できたとのことです。トンボは4つの羽をそれぞれ独立に動かしているわけですが、スロー再生もなかった時代にそれを観察するってあり得ないですね。遠近法や光と影の描写なども、そこから来ているのでしょう。 本の最後でも再度取り上げられてましたが、彼のやることリストに「キツツキの舌を描写せよ」というのがあったそうです。これは死ぬまでには達成できなかったようですが、筆者によると、それを達成できたところで普通の人の人生には何の役に立たない、しかしそれを真面目にやるというのがレオナルドのすごいところ、だそうです。当然、現代科学においてキツツキの舌がどうなっているのかは解明されていますが、その探究心には驚かされるばかりです。 この本を読んで最も印象に残ったのは、新たな発見というのは徹底的な観察から生まれるのだなということです。先述のトンボもそうですが、レオナルドは水の渦にも並々ならぬ興味を抱いていて、そのスケッチも数多く紹介されています。なんでも一日中、川のほとりで渦を眺めていたなんてこともあったようです。500年前の時点で、そういった現象は最後には宇宙にまで適用できるというメモまで残していたくらいで、本当に注意深く観察することは大事なんだなと思いました。 実はスティーブ・ジョブズにもこのようなエピソードがあ...

本の紹介『隠れていた宇宙』

そんな世界があったら、どうしようかな。 ブライアン・グリーン 『隠れていた宇宙』(Kindle版)(上・下) 大田直子訳、早川書房、2013年 以前にも紹介したブライアン・グリーン氏の著書です。しかし、今回は理解に相当苦しみました。というか、まだ苦しんでます。 簡単に言うと、多宇宙論です。この世界のどこかに、我々が住む宇宙とは別の宇宙があるという話ですね。銀河が複数あるのではなく、宇宙そのものが複数あるという話です。人間が生きているうちに自分そっくりの人と3人会うなんていいますが、それどころか自分と同じ存在がどこかの別の宇宙にいるという、理解に苦しむ話です。これは量子論の世界ではありうることらしいですね。詳しくは分かりませんが。 同じ時間、どこかで並行に暮らす自分がいる。もはやおとぎ話の世界ですね。でも、小さい頃に自分以外は宇宙人で、見えないところでは宇宙人の姿で生活しているのではないかという、どこのオカルトから仕入れた知識だよというようなことを信じていた時期もありましたので、そんなことを解決してくれる理論なのかもしれません。今となっては、そこの解決にあまり興味はなかったりしますがw 正直、内容はちんぷんかんぷんですが、グリーン氏の著作という点も加味して4点評価です。 評価:★★★★☆

本の紹介『サカナとヤクザ』

必要悪、ということでしょうか。 鈴木智彦 『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』 小学館、2018年 著者はルポライターで、暴力団関連の分野を得意としています。以前、別の本を読んでなかなか面白かったので、その流れでアンテナを張っていたところ、本書のPRを見つけて目をつけていた次第です。内容は副題のとおり、密漁ビジネスについてです。 暴力団はいろんなところに目をつけて収益源を確保するわけですが、なぜ漁業かというと、手間がかからないからだそうです。農業や畜産業では育てる手間があるが、漁業は海で育った海産物を獲るだけなので元手がかからなくていいそうです。でも真っ当なビジネスでは儲からないので、密漁ということになるそうです。本書ではアワビ、ナマコ、カニ、うなぎの密漁ビジネスが紹介されています。 密漁といっても、漁業のもともとの性質などを考えると、どうしても密漁が発生しやすいらしいですね。要は、漁獲量の上限が決まっている場合、例えば10トンまでしか獲ってはいけないというケースで、網あげてみたら12トンかかってましたというときに、上限を超えた分は捨てるわけではなく、別ルートで流すそうです。これはある意味では仕方ない部分で、警察や海上保安庁なども取り締まらないみたいですが、そこに密漁ビジネスが繁栄する余地があるみたいです。そのほか、ナマコなんかは日本ではあまり食されないと思いますが、中国ではハレの日の高級食材としてのニーズが高く、そこで一儲けできるというわけですね。カニは北方領土がらみでソ連(ロシア)の経済的水域で大量に取れるが、そこでは当然密漁になるわけですが、見返りに日本の情報を渡して見逃してもらうみたいな話が紹介されています。 築地で取引されていた魚の中にも一定量の密漁でとれたものが混じっているなど、構造的にどうにもならんといった感じです。これをひっくり返すとなるといろいろともめ事が起きるのだろうなというエピソードが満載です。 いまの時代の視点で見ると暴力団が絡んでいて社会的に問題とはなりますが、むかしからの共存共栄という流れで考えると、今すぐにそれを潰すということではなく文化的な側面も持っているというのが話をややこしくしている要因かと思います。 評価:★★★★☆

本の紹介『安倍官邸 VS. NHK』

森友学園問題はこのままフェードアウトか。 相澤冬樹 『安倍官邸 VS. NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』 文藝春秋、2018年 筆者は元NHK記者で、森友学園問題を取材していた人です。現在はNHKを辞めて、大阪日日新聞の記者をしています。森友学園問題を追及していたのですが、最終的には記者職を外されたためにNHKを辞めたという経緯です。 タイトルは安倍官邸vsNHKですが、事件そのものがメインではなく、取材の経緯やそのなかでのドラマが中心の話です。事件自体は継続取材をしているため、あまり細かいことは書けないということかもしれません。筆者が強調しているのは、森友学園問題はあくまでも国有地を売却した国と小学校の設置認可を取り消した大阪府の問題であって、直接に森友学園には森友学園の問題ではないということです。世間では森友学園が不正を働いたように捕らえられている印象がありますが、そこではないというのがこの本の本旨です。 いくつかこの件について特ダネを飛ばしている筆者ですが、真実を明らかにしたいという意欲は素晴らしい。本人も書いているようにかなり扱いにくい記者のようで、いろいろともめ事を起こしているようですが、基本的にプロの記者としての姿勢は尊敬できます。 また、取材対象との信頼関係の築き方、それによって得られた籠池夫妻との独占インタビュー、そこで得られた籠池夫妻の印象など、取材現場のリアルは見えるのかなと思います。先述のとおり、事件そのものを知りたいのであればこの本ではありません。しかし、森友学園問題に関わるNHK内のすったもんだの記述は迫力があると思います。 評価:★★★★☆

本の紹介『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』

ベストセラーです。 ユヴァル・ノア・ハラリ 『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上・下)』[Kindle版] 柴田裕之訳、河出書房新社、2016年 ホモ・サピエンス、つまりいまの人類について書かれた本です。ネアンデルタール人などのいわゆる類人猿から進化したホモ・サピエンスがいかにして生き残り発展したかについて書かれています。特に2つの革命、すなわち認知革命と農業革命がキーワードになると思います。 認知革命というのは、「新しい思考と意思疎通の方法の登場」のことを指します。最も信じられている説によると、遺伝子の突然変異でまったく新しい種類の言語を使って意思疎通をしたりすることが可能になったというわけです。 とりわけ、この認知革命に関して面白いのは、これによって人類は「虚構」について語ることができるようになったというものです。虚構、すなわち架空の事柄について語る能力が身についたことでいろんなことが生まれてきたというわけです。これに従うと、法律も宗教も経済もすべて虚構、つまり想像上のできごとなのです。国家も権力も戦争もすべて虚構。組織も会社も虚構。確かにいずれも人間の思考の結果生まれたものです。うーん、おそるべし、認知革命。 次に農業革命。人類がいくつかの動植物種の生命を操作するようになって、食料生産は劇的に生産性を上げたというものです。それによって食料を求めてさまよう必要がなくなり、定住が始まった。そして小麦、米などの生産が始まって現代に至るというわけです。 このいくつかの動植物種の生命を操作するというのは、ちょっと考えるとけっこうえげつないです。例えば、鶏。食用の鶏は生まれてからすぐに身動き取れないくらいのゲージに入れられてひたすら餌を与えられる。食べる、太る、鶏肉。食べる、太る、鶏肉。豚も牛もうまれてすぐ親から引き剥がされ、食べる、太る、肉になる。もうパワハラ、人権侵害どころの話じゃありません。普段はあまり意識しませんが、ここまで露骨に食物連鎖を作り出すというのもちょっと気持ち悪いものがありますね。 その他、科学の成立、文化の形成といったものについて、人類史を紹介しています。大航海時代以降の文明論にも触れられていて、これは支配されることになる民族にとってはいい迷惑、侵略する方はよりよい生活を与えてやったんだからいいだろ?みたいな話なん...

本の紹介『宇宙を織りなすもの』

これは個人的には年に1度の大ヒットです。 ブライアン・グリーン著、青木薫訳 『宇宙を織りなすもの』(上下巻) 草思社文庫、2016年 毎年恒例のゴールデンウィーク書店巡りを今年は実施しなかったので、出かけついでに寄った新宿の紀伊国屋書店で見つけた本です。 著者は物理学者で、以前に他の宇宙関連本でもヒットを飛ばしたようです。これは宇宙論をかじっている身から言うと、かなりの大当たり炸裂でした。上下巻で1,000ページを超えますので読むのはそれなりの時間がかかりましたが、時間をかけた価値が十分にあると言ってよいでしょう。 内容自体もかなりいいのですが、タイミング的に基本的な宇宙論をひととおり触れた直後というのもよかったです。すなわち、今まで読んだものを復習しながらまだ学習前の理論に触れることができました。その理論が超ひも理論という、これまた意味不明な理論なのでこれから苦労すると思いますが・・・ それ以外にも不確定性原理やらパラレル宇宙やら、重力は非常に弱い力であるとか、一般人の思考では完全に理解不能な世界が展開されており、その辺と格闘しながらの読書でした。重力についてはゼムクリップに磁石を近づけると容易に持ち上がるくらいの力しかないという例えで説明してましたが、地球の重力がわずかの力しかないというのもやや違和感がありました。しかし、最近はなかなかそういう格闘系の本とも出会いませんので、非常にいい刺激にはなりました。 それにしても、宇宙はどのように始まったのかという点を突き詰めていくと、神学論争にしか行き着かないような気がしてきました。物理学者の皆さんは「神の創造物」というのは頑なに否定しますが、私のような素人には神以外に誰が作れるのかというのが早々に頭を巡ってしまいます。 評価は光の速さと同じとします。 評価:時速10億8千キロメートル

本の紹介『ホーキング、宇宙を語る』

天才による、素人向けの本です。 スティーブン・W・ホーキング 『ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』[文庫版] 林一訳、早川書房、1995年 今年亡くなった物理学の天才ホーキング博士の書です。できるだけ一般人にも分かるように、数式は1つを除いて使わないと前書きで予告されていたとおり、E=MC²以外は使われておりません。詳しい人にしてみれば物足りないのでしょうけど、かなりの頻度で立ち止まりながらの読了です。 宇宙についてはまだまだ分かっていないことだらけです。宇宙の始まりはなんなのかとか、宇宙空間は無なのかとか全くと言っていいほど解明されていないというのが現状です。そもそも同じ太陽系ですら、人類は月以外に行ったことがありません。太陽系の第4惑星の火星まで8ヶ月かかりますし、太陽系から最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリまで4光年、目視可能なアンドロメダ銀河では250万光年という想像もつかない距離です。それに挑もうというのだから、相当なものです。 この本が出てから30年が経過していますので、その間の物理学の進化を考えるともっといろんなことが分かっているのかもしれません。ただ、一般のファンは難しいことは分からないので、理解可能な情報の範囲で楽しむしかありません。本書はなんとかその範囲内にあると言うことできるでしょう。 この本を読み終えた後、新たに宇宙関係の本を読み始めており、そちらがかなりエキサイティングかつ分かりやすい本なので、いま読めば膝を打つような場面がいくつもあるかもしれません。時間に余裕があれば、読み返してみようかと思います。 評価:★★★★☆

本の紹介『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』

ジョブ=解決策を雇うという考え方。 クレイトン・M・クリステンセン 『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』[Kindle版] 依田光江訳、ハーパーコリンズ・ジャパン、2017年 『イノベーションのジレンマ』以来、何年ぶりかのクリステンセン教授の本です。業務上でネタに上がったので買ってみました。要するに、自らの課題を解決するための解決策を雇うという概念なので、ジョブ理論と命名されています。 ジョブ理論そのものは特段目新しい考え方ではないと思いますが、改めて自分の業務周りを俯瞰してみると、なるほど解決策の提示という視点は足りてないなと思いました。人はそのサービスをなぜ買うのか?本書内でも紹介されていますが、レビット教授の「人は4ミリのドリルを買うのではなく、4ミリの穴を買っているのだ」という言葉に端的に表されているとおり、購入活動の先に何があるのかをじっくりと考えないと表面的な話に終わるとというわけですね。 ところで読後の感想ですが、上記のレビット教授の言葉でこの本の本質が表現できちゃうのではないかと。だからといって、本書を買う意味がないというわけではありませんので、その辺は誤解なきよう・・・ 評価:★★★★☆

本の紹介『常勝集団のプリンシプル』

9連覇の基礎はここにあり。 岩出雅之 『常勝集団のプリンシプル』[Kindle版] 日経BP社、2018年 昨シーズンに前人未踏の大学選手権9連覇を達成、今年度は10連覇に伸ばそうという帝京大学ラグビー部の監督である岩出さんが書いた本です。岩出さんはすでに本は書いているので、それらの情報に加えて、昨シーズンの状況や新たに取り入れている施策などを追記したような形です。なので、特段、目新しい部分はないのですが、やはりしっかりと基礎を継続しているという印象ですね。 帝京大学ラグビー部の特徴として、雑用は4年生がやるというものがあります。練習の準備、片づけ、寮の掃除など、一般的には新入りがやるだろうというものを最上級生がやるというものです。レギュラーだろうがキャプテンだろうが関係なしです。狙いは慣れない大学生活で勉強なども大変な上に、部では体作りなどいろいろとやることがあるので、1年生は自分のことに集中して欲しいということになります。 帝京大学ラグビー部では授業の出席は必須ですので、おそらくはラグビーばかりで勉強は得意でない学生が大半でしょうから、これは精神的にはかなりの負担になるのは間違いなさそうです。そこにキツい練習、その後の雑用、先輩達からのあれやこれやでは、いまどきの若者は参ってしまうでしょう。 実際に、ちょっと前にNHKでやっていた帝京大学9連覇のドキュメントでもそれは紹介されていて、4年生が雑用やってました。岩出さんはこれを「体育会系イノベーション」と名付けていて、他校からはなかなか理解されない部分と語っています。一例として、他校の4年生に「帝京は4年生が雑用やらされて大変だな」と言われたエピソードがあり、しかし帝京の選手たちは入学時からこれが当たり前のところにいるので対応に困ったというものがあります。 個人的にはこういうやり方を変えていかないと世界からはドンドン置いて行かれると思っています。ラグビーでは高校生レベルくらいであれば、そこそこ世界と戦えてますが、なぜか上のレベルになればなるほどコテンパンにやられるという傾向があると思います。「体育会系イノベーション」がこれを打破してくれると思いますので、岩出さんにはもっとやって欲しいですね。 帝京大学ラグビー部の強さの秘訣を覗いてみたいという方にはオススメの一冊です。 評価:★★★★...

本の紹介『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』

不器用なのか、一徹なのか。 森功 『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』 講談社、2017年 健さんの知られざる姿を追った本です。私生活のことはあまり知られていない健さんですが、この本によると、かなりいろんなことがあった波乱の人生のように見えます。本書内でも、私生活でも高倉健を貫いた人生とありましたが、あながちそれもウソではないように思える読後です。 身内を語る女性に詐欺に遭ってそれなりの資産を失ったとか、養女を名乗る女性に遺産を持って行かれているとか、江利チエミさんとの結婚生活とか、ある意味「高倉健」的なエピソード満載ですが、とにかく全容は不明なので本書も若干モヤッとした内容になっています。 昔はアイドルとか芸能人の私生活はベールに包まれていたような印象がありますが、最近は何でもバレちゃう時代です。それを考えると、時代の流れに合わせてただでさえミステリアスな健さんの人生を深追いすることも、あまりオツではないのかもしれません。 仕方ないのでしょうけど、内容がモヤモヤしている点を割り引いての評価です。 評価:★★★☆☆

本の紹介『新・ラグビーの逆襲 日本ラグビーが「世界」をとる日』

ラグビー日本代表は、2015年以上の結果を出すことができるのか。 永田洋光 『新・ラグビーの逆襲 日本ラグビーが「世界」をとる日』[Kindle版] 言視舎、2017年 ラグビー日本代表について書かれた本です。著者はラグビー関係の記事、著書を多く書いている人です。前回のラグビーワールドカップでは大健闘の予選リーグ3勝も、決勝トーナメントに進めなかった日本代表ですが(過去に3勝しても進めなかったのは日本代表だけ)、ヘッドコーチが変わってからはその時の勢いはなさそうに見えます。 言ってしまえば、前回のジョーンズ体制から現在のジョセフ体制になってから、戦術などが日本代表にあっていないという内容です。外国人監督では初めて日本人にあわせた作戦や強化方法を採用したジョーンズ体制をまったく引き継がず、これまでのように外国人頼みの方法に戻ってしまった、それでは勝ち目がないという話です。 ラグビーの代表は他の競技と違って、その国の国籍を持っていることが必須条件ではありません。ラグビーの場合は国民の代表という考えではなく、その地域に住んでいる人の代表という考え方の方が分かりやすいと思います。よって、外国出身の選手でもその地域で3年以上居住などの条件を満たせば、日本代表に入ることが可能です。実は現監督のジェイミー・ジョセフもその制度を用いて日本代表でプレーしました。他の国もこの制度で外国出身選手を入れているケースがありますので、特殊な話でもありません。著者も外国人を入れること自体には異論はないでしょうが、日本人を主体とするチームの戦い方ではないということを強調しています。 ジョセフ監督の出身国であるニュージーランドをはじめ、体の大きな選手が揃うチームが取る戦略と、日本のように体格に劣るチームが取る戦略は別物であり、ジョセフのようにニュージーランド式の戦い方ではダメというわけですね。 ただ、最近は以前のような戦法をとることも多く、そこはチーム作りをしながら修正をしてきている点かと思いますので、今後の動きには注目、そして期待です。 評価:★★★☆☆

本の紹介『SHOE DOG―靴にすべてを。』

NIKEの創業者です。 フィル・ナイト 『SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。』[Kindle版] 大田黒 奉之訳、東洋経済新報社、2017年 ナイキの創業者の著書です。ナイキの立ち上げから成長軌道に乗せるまでのストーリーです。いまや誰もが知るスポーツアパレルメーカーですが、初期の苦戦などが語られています。意外だったのは、日本の会社と繋がりがあることです。まずは現在のアシックス、当時のオニツカタイガーをアメリカに輸入して販売し始めたのが発端であったり、その後にオニツカともめたときに日商岩井との取引があったり、初期の生産は日本の会社が行っていたりと、日本に何度も足を運んだことが書かれています。 この記事を書いているのは箱根駅伝が行われている1月2日ですが、年末にはTBSでドラマ「陸王」をやっており、マラソンシューズに関わる話だったので、並行して楽しく読むことができました。陸王でもそうでしたが、いかに一流選手との契約を取り付けるかで売上を大きく左右することになりますので、一流選手に履いてもらうための努力は並々ならぬものがあります。ナイキもやっと見つけた選手が活躍し始めたところで交通事故で亡くなる、約束まで取り付けた一流テニスプレイヤーに約束を反故にされるなど、大変な苦労が紹介されています。 その他、理想的なソールを作るためにワッフルを焼く機械を何台もダメにした、創業から10年以上資金繰りに苦労したなど、なかなか熱い話が数多く紹介されています。また、ご子息をダイビングの事故で亡くすといった悲しい話も盛り込まれています。 諦めず、誠実に事業を行わないと成功しないんだなというのは、改めて感じた部分です。 一方で、個人的な趣味としてはマイケル・ジョーダンを始めとするスーパースターとの関係がさらっとしか書かれていなかったので、そこをもうちょっと知りたかったなというところですが、そこは著者の意図とはズレる部分でしょうから評価には含めないこととします。 評価:★★★★☆

本の紹介『ハングリーな組織だけが成功を生む』

いつも強面。 沢木敬介 『ハングリーな組織だけが成功を生む』 ぴあ、2017年 日本のラグビーの最高峰、ジャパンラグビートップリーグのサントリーサンゴリアスの監督である沢木敬介氏の著書です。他の書籍やテレビのインタビューなどから分かるのは、いつも強面ということです。意図的にやっている部分があるにしても、選手としては怖い存在のようです。 沢木氏はサントリーでプレーし、その後コーチに就任し、さらには日本代表のスタッフとして2015年のワールドカップに出ています。そんな彼の指導者としての考えをまとめた本です。 彼はサントリー、日本代表で指揮を執ったエディー・ジョーンズ氏(現イングランド代表監督)と長く一緒にやっているので、エディーさんの影響を受けていることを認めいています。エディーさんの著書にもあるように、彼の指導の特徴はダメなものに対して、どこかが足りないかを明確にすることにあると思います。例えば2015年のワールドカップにおいては、それまであふれる才能を持ちながら日本代表に呼ばれていなかった山田章仁に対して「もっとトライを取り切る力を身につけないと代表には呼ばない」と言ったり、五郎丸歩にも「キックの成功率を85%以上にすること」を指示していました。つまり、提示した基準をクリアすれば代表に招集されるというわけです。 海外では当たり前なのかもしれませんが、これは沢木氏も採用していることで、これはそのまま日常の会社生活でも応用可能かと思います。スタンダードがぶれてしまうと部下はやりづらいですよね。基準さえしっかりしていれば、どんな状況でも対応できるというわけです。ちなみにエディーさんはビジネス書もよく読んでいるらしく、そこからヒントを得たのであれば、なおのこと、ビジネスでも応用できる内容であると思います。 ひとつ残念なのは、シーズン途中に書かれているためか、あまり細かいところまで突っ込んでいないところですね。次回作があるのであれば、ぜひ細かいところまで書いてもらいたいですね。 評価:★★★★☆

本の紹介『9プリンシプルズ』

やはりJoiさんはJoiさんでした。 伊藤穣一、ジェフ・ハウ 『9プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために』[Kindle版]、早川書房、2017年 過去の書評でも触れていますが、伊藤穣一氏(相性はJoi。名前のジョウイチから由来)は私が最初に入った会社の社長だった人で、現在はMITメディアラボの所長を務めています。その彼がこれからを生きていくための9つの原則を紹介している本です。これらの原則は、メディアラボでも実践されている内容のようです。 構成自体はシンプルで、それぞれの原則についての説明がメインですが、物事に対する答えと言うよりも、考え方を示している本ですね。 物事をどの視点から見るべきなのか、そしてそれをどう考えるべきなのか、といったことについてのヒントは多く、それ自体も非常に参考になりますが、それを実際にどのように実践しているかという部分は深く知りたいところです。軽くしか紹介されていないので。 あまり根詰めて考えすぎないというところは見習うべきところであり、何かに行き詰まったときには役に立つ書かもしれません。 評価:★★★★☆

本の紹介『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―』

内容がエグすぎます。 豊田正義 『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―』[Kindle版] 新潮社、2009年 これは2002年に北九州市で起きた事件のルポです。以前からAmazonのウィッシュリストには入れていたのですが、10/15にフジテレビの「ザ・ノンフィクション」でこの事件に関する放送をやっていたのをたまたま観て、あまりの内容に即ポチした次第です。番組では主犯の夫婦の息子が顔だけ隠してインタビューに答えています。 詳細はネットにいくらでも情報が転がっていますのでそちらをみていただくとして、とにかく最初から最後まで気持ち悪い、むかつくといった精神的症状のオンパレードです。よくもまぁ、これまでの状態が実現するなぁと不思議に思うばかりです。 大まかにまとめると、主犯の1人である男が天才的な詐欺能力とでも言うのでしょうか、その能力を使って周囲の人間を洗脳して、家族同士で殺し合いをさせるという、もう想像を絶するような事件なわけです。実の親、配偶者、そして子どもにまで手をかけてしまうという、常識の範疇では思いもつかないようなことが行われた凄惨な事件です。 結局、7人が殺害されたわけですが、死人に口なしをいいことに、ものすごいストーリーをでっち上げ、殺人事件を扱う法廷にも関わらず、傍聴者を笑いの渦に巻き込むという、これまた信じがたい事象も起きるなど、主犯格の男のとんでもない能力のために異常なできごとが連発する事件です。 事件は殺害された最初の被害者の娘が監禁から逃げ出し、一度は逃亡先の祖父母の元から連れ戻されたものの、洗脳されなかった祖父が2度目の逃亡を機に警察に駆け込んだことから発覚します。主犯の男とその妻は完全黙秘で裁判が滞りかけていましたが、その逃亡した女子が思い出したくもないであろう悲惨な事件を語り始め、それで我に返った妻が態度を変えて全てを告白したところから一気に進展します。もし妻が洗脳されたままだったら、迷宮入りしたと思われます。 本書では事件の顛末のほか、主犯の1人である妻と著者の手紙のやり取り、刑務所での面会の様子などが書かれています。本人は洗脳されたとは言え、自分のやったことは一生かけてでも償っていくということを表明しているようで、時間が経つにつれて人間らしい表情も取り戻すなど、そこは本書の中でも少ない救いの部分です。ただ...