本の紹介『安倍官邸 VS. NHK』

森友学園問題はこのままフェードアウトか。

相澤冬樹 『安倍官邸 VS. NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』 文藝春秋、2018年

筆者は元NHK記者で、森友学園問題を取材していた人です。現在はNHKを辞めて、大阪日日新聞の記者をしています。森友学園問題を追及していたのですが、最終的には記者職を外されたためにNHKを辞めたという経緯です。

タイトルは安倍官邸vsNHKですが、事件そのものがメインではなく、取材の経緯やそのなかでのドラマが中心の話です。事件自体は継続取材をしているため、あまり細かいことは書けないということかもしれません。筆者が強調しているのは、森友学園問題はあくまでも国有地を売却した国と小学校の設置認可を取り消した大阪府の問題であって、直接に森友学園には森友学園の問題ではないということです。世間では森友学園が不正を働いたように捕らえられている印象がありますが、そこではないというのがこの本の本旨です。

いくつかこの件について特ダネを飛ばしている筆者ですが、真実を明らかにしたいという意欲は素晴らしい。本人も書いているようにかなり扱いにくい記者のようで、いろいろともめ事を起こしているようですが、基本的にプロの記者としての姿勢は尊敬できます。

また、取材対象との信頼関係の築き方、それによって得られた籠池夫妻との独占インタビュー、そこで得られた籠池夫妻の印象など、取材現場のリアルは見えるのかなと思います。先述のとおり、事件そのものを知りたいのであればこの本ではありません。しかし、森友学園問題に関わるNHK内のすったもんだの記述は迫力があると思います。

評価:★★★★☆

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