本の紹介『時間は存在しない』

時間が存在しないなんてことがあるのでしょうか?

カルロ・ロヴェッリ 『時間は存在しない』 冨永星訳、NHK出版、2019年

筆者はイタリアの物理学者です。本屋に並んでいたのは知っていたのですが、通勤途中の電車で読んでいる人を見かけたので、勢いでアマゾンから注文。

私たちが生きる時間の流れがひとつではない、そう言われるとかなりの違和感を抱くのが普通のことかと思います。しかし相対性理論で考えると、時の流れを統一する基準がないということになります。これってなかなか理解できませんけど(私も詳細まで理解しているわけではないですが)、意外に身近に?感じることができます。例えば、最近のこちらのニュースです。

東京スカイツリーで一般相対性理論確認 東大など研究グループ

相対性理論によると高速で動けば動くほど、または重力がかかるほど時間の進みが遅くなります。まぁ、高速で動くのと重力がかかるのは同じことになるんですが、上記のニュースではスカイツリーのてっぺんの方が地上よりも重力が少ないので、時間の進みが早いということが実験でも検証されたというわけですね。時空の歪みです。

他に身近な例では人工衛星がありますね。人工衛星が静止軌道に乗るためには、地球の自転と同じ速度で動く必要があり、それは時速2万4000キロメートルです。言ってしまえば、地球上の人も同じ速度で動いているのですが、相対性理論は相対性を問題にするため、地上の人が止まっていて人工衛星が超高速で動いているという解釈になります。で、結果的に地上との時間差が生じるために、GPSなどで使われる通信衛星は自動的にその誤差を補正するため時間の進みが地上とは異なるように設定されているのです。

ということが実際に起きている。では時間の流れは同じとは言えないではないかというのが本書の提起する疑問です。この疑問について、過去の哲学者の考え方であるとか、物理学的にはこうなるとかいうことを論じています。

普段の生活で重力がかかるかからないで時間の流れが違うといったことは考えませんが、そういった考え方、そしてそこから出てくるエントロピーの考え方は非常に面白いと思います。そのような思考方法を日常業務なんかにも適用できないかな、なんてことをおぼろげに考えていたりします。違った視点から物事を眺めてみると日々の生活にもいい刺激になりますし、巣ごもり生活のお供にしてもよいかと思います。

評価:★★★★☆

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