本の紹介『レオナルド・ダ・ヴィンチ』

レオナルドと言えば、ディカプリオ?

ウォルター・アイザックソン『レオナルド・ダ・ヴィンチ』 土方奈美訳、文藝春秋、2019年

著者はスティーブ・ジョブズの公式自伝を書くなど、伝記物では有名な人です。前掲書は読んでいますので、そういった意味では書店で目についたときに迷わず購入しました。分厚いカバーの上下2巻、読み応え抜群です。

レオナルド・ダ・ヴィンチといえば、「モナリザ」、「最後の晩餐」、ヘリコプターのスケッチなど多岐にわたる才能を持った人というイメージですが、実際にもそのとおりのようですね。科学の知識を芸術にも応用したという点で有名ですね。例えば、遠近法。有名なのはモナリザにおけるそれですが、それ以前にすでに他の絵画にも応用していたというものです。その他、光の当たり方による色の変化などにもかなり力を入れたようです。

ここで挙げておくべきは彼のものすごい観察力です。筆者によれば、動体視力が優れていたようで、トンボが4つの羽でどんな風に飛んでいたのかを把握できたとのことです。トンボは4つの羽をそれぞれ独立に動かしているわけですが、スロー再生もなかった時代にそれを観察するってあり得ないですね。遠近法や光と影の描写なども、そこから来ているのでしょう。

本の最後でも再度取り上げられてましたが、彼のやることリストに「キツツキの舌を描写せよ」というのがあったそうです。これは死ぬまでには達成できなかったようですが、筆者によると、それを達成できたところで普通の人の人生には何の役に立たない、しかしそれを真面目にやるというのがレオナルドのすごいところ、だそうです。当然、現代科学においてキツツキの舌がどうなっているのかは解明されていますが、その探究心には驚かされるばかりです。

この本を読んで最も印象に残ったのは、新たな発見というのは徹底的な観察から生まれるのだなということです。先述のトンボもそうですが、レオナルドは水の渦にも並々ならぬ興味を抱いていて、そのスケッチも数多く紹介されています。なんでも一日中、川のほとりで渦を眺めていたなんてこともあったようです。500年前の時点で、そういった現象は最後には宇宙にまで適用できるというメモまで残していたくらいで、本当に注意深く観察することは大事なんだなと思いました。

実はスティーブ・ジョブズにもこのようなエピソードがあり、ジョブズは人間の手の機能が素晴らしいと言って、ずっと手を動かしながら観察していたこともあったようです。つまむ、握る、はじくといったことを何度も繰り返していたそうで、その結果、iPhoneを思いついたのだとか。

社会システム理論でも観察者というのが重要な位置を占めていますので、これは肝に銘じながら今後の学問に活かしたいと思います。

ここで余談を2つ。本書ではレオナルドと呼んでいます。日本ではダ・ヴィンチの方が通っていると思いますが、レオナルド・ダ・ヴィンチとは「ヴィンチ村のレオナルド」という意味です。なので、ダ・ヴィンチというのは「ヴィンチ村の」と言ってるに過ぎませんので、レオナルドというのがよいかと思います。

2つめ。ダヴィンチコードはでっち上げだと断罪しています。ノストラダムスの大予言みたいなもんですかね。オカルトな説をそれらしく取り上げているに過ぎないと紹介されてました。けっこう熱上げて読んだのですがね・・・

ちなみに、買うのであればKindleではなくて書籍で買うことをオススメします。文章と作品が載っているページを行き来するということを繰り返すことになるので、Kindleではかなり不便です。

評価は自信の五つ星です。多分、今回の文章の長さはこのブログの過去最長レベルです。これでも全然紹介できてません。盛りだくさんです。

評価:★★★★★

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