本の紹介『常勝集団のプリンシプル』

9連覇の基礎はここにあり。

岩出雅之 『常勝集団のプリンシプル』[Kindle版] 日経BP社、2018年

昨シーズンに前人未踏の大学選手権9連覇を達成、今年度は10連覇に伸ばそうという帝京大学ラグビー部の監督である岩出さんが書いた本です。岩出さんはすでに本は書いているので、それらの情報に加えて、昨シーズンの状況や新たに取り入れている施策などを追記したような形です。なので、特段、目新しい部分はないのですが、やはりしっかりと基礎を継続しているという印象ですね。

帝京大学ラグビー部の特徴として、雑用は4年生がやるというものがあります。練習の準備、片づけ、寮の掃除など、一般的には新入りがやるだろうというものを最上級生がやるというものです。レギュラーだろうがキャプテンだろうが関係なしです。狙いは慣れない大学生活で勉強なども大変な上に、部では体作りなどいろいろとやることがあるので、1年生は自分のことに集中して欲しいということになります。

帝京大学ラグビー部では授業の出席は必須ですので、おそらくはラグビーばかりで勉強は得意でない学生が大半でしょうから、これは精神的にはかなりの負担になるのは間違いなさそうです。そこにキツい練習、その後の雑用、先輩達からのあれやこれやでは、いまどきの若者は参ってしまうでしょう。

実際に、ちょっと前にNHKでやっていた帝京大学9連覇のドキュメントでもそれは紹介されていて、4年生が雑用やってました。岩出さんはこれを「体育会系イノベーション」と名付けていて、他校からはなかなか理解されない部分と語っています。一例として、他校の4年生に「帝京は4年生が雑用やらされて大変だな」と言われたエピソードがあり、しかし帝京の選手たちは入学時からこれが当たり前のところにいるので対応に困ったというものがあります。

個人的にはこういうやり方を変えていかないと世界からはドンドン置いて行かれると思っています。ラグビーでは高校生レベルくらいであれば、そこそこ世界と戦えてますが、なぜか上のレベルになればなるほどコテンパンにやられるという傾向があると思います。「体育会系イノベーション」がこれを打破してくれると思いますので、岩出さんにはもっとやって欲しいですね。

帝京大学ラグビー部の強さの秘訣を覗いてみたいという方にはオススメの一冊です。

評価:★★★★☆

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