本の紹介『決定の本質』

久々に政治学の本を買いました。

グレアム・アリソン、フィリップ・ゼリコウ 『決定の本質Ⅰ, Ⅱ』 漆間稔訳、日経BP社、2016年

本書は1970年に出版された本の第2版です。その後に起きた事象も追加されています。アメリカのケネディ政権時代に起きたキューバミサイル危機での判断について書かれています。

本書では3つの視点から研究しています。すなわち、合理的行動、組織行動、そして政府内政治です。本書最後の解説によると、合理的アクターモデルの不十分さを説き、政府のような大きな組織の行動を組織過程の所産として捉える第2モデル(組織行動)、そして政府を構成する多数の人物の間の駆け引きの結果としてみる第3モデルを提示するのが目的です。

合理的アクターモデルが疑わしいというのは、最近の経済学の潮流を追っていれば分かることですが、世間的には合理的判断が優先される傾向はあると思います。もちろん、個人の判断としては合理的な判断がなされるべきで、そこはほぼ正解かと思いますが、人が集まる組織としてはそれでよいのかという議論も出てきます。それが本書の第2モデルの組織行動であり、さらには構成員間の駆け引きという第3モデルまで広がるわけです。

実際の話、会社勤めをしているとこのようなことには日々出くわします。都度都度の判断において、合理的な判断を主張してくる人たちも多くいるわけですが、それはそれで個別の判断としては正解なのかもしれません。しかし、上記の第3モデルで考えると、同じ事象でも会議のメンバー構成によって答えが変わってくるわけですから、その辺も考えたうえでの判断が必要となるということは意識しておくといいかもしれません。特に自分が主催者である場合には参加者をよく考えて選択するとか、まぁ恣意的な選択と言われるかもしれませんが、社内政治を勝ち抜くにはそれくらいのことも必要だということを本書が示していると言えます。

ところで、この本をきっかけに組織行動に関する本を年末に神保町で仕入れてきました。この辺に関して少しの間、ハマりそうな予感です。試験まで1週間ですが、それじゃダメだわな・・・

評価は納得の5つ星です。

評価:★★★★★

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