本の紹介『誰のためのデザイン?』

今回は仕事がらみの本です。

D.A.ノーマン『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン言論』野島久雄訳、新曜社、1990年

ノーマン氏は、現在のappleのデザインの基礎を築く際に大きな役割を担った人物です。かたや、私はといえば昔から美術の評価が5段階で常に2だったくらい、デザインなどとは無縁な人物です。それがなぜデザインの本なのか?

最近、UI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)といったことが注目されています。要するに使いやすいデザインとはなにかということだと思いますが、業務上、私も無関心でいるわけにもいかず、じゃぁちょっと勉強してみるかというのがきっかけです。

以前、本の紹介で『Think Simple』というアップルの、というかジョブズ氏の思想について書かれた本を紹介しましたが、その流れでここにたどり着いたといってもいいでしょう。

大雑把に言ってしまえば、デザインというのはぱっと見でそれをどのように使うのかがわからなければならないという主張です。例えばドアノブ。一般的に存在する握って下に押すタイプのあれですが、普通は下に押してドアを押すか引くかという作業になります。それが横にスライドするタイプのドアならどうでしょう?とまどうはずです。あるいは水道ですが、いまは少なくなっているのかもしれませんが、温水と冷水に分かれていて自分でそれぞれを出しながら調整するタイプの蛇口で、実はどちらをひねっても適温の水が出てきたらどうでしょう?といった感じの内容です。

さて、身近にもいい例を見つけました。我が家の玄関です。縦型のバーで開閉するのですが、外から入るときにはそのバーを引き、ドアを手前に開ける。中から出るときにはそのバーを押し、ドアを外側に開く仕組みになってます。つまり、バーを操作する動作そのままでドアの開閉ができるというわけですね。今まで全く意識してなかった。

appleの製品はこの思想をもとに設計されていると聞きます。確かに、私の息子は教えてもいないのにiPhone、iPadを使いこなしています。よく言われる「直感的」に操作できる仕組みなのですね。私が手掛けているサービスは複雑になりがちなので、この本の内容はできるだけわかりやすくするためのヒントになりますね。

評価:★★★★☆

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