本の紹介『山口組 分裂抗争の全内幕』

「お控えなすって」の世界は、はるか昔の話です。

盛力健児,西岡研介,鈴木智彦ほか 『山口組 分裂抗争の全内幕』 宝島社, 2015年

日本最大の暴力団、山口組の分裂に関する書籍です。現在進行中の事象であります。盛力さんはすでに引退した、元山口組系の組長です。さすがに内部事情には詳しく、そういった意味では本書に現実味を与えているとも言えます。

簡単に言ってしまえば、いまの6代目のやりかたが気にくわないので分裂したということなのですが、これを昔気質のヤクザと現代的な経済マフィアとしてのヤクザの対立と言い換えてもいいでしょう。前者は義理を重んじ、ルール違反にはそれなりの処罰が待ち受けているという世界ですが、後者は経済的なルールに基づき動くという、ある意味では一般と同様の世界です。

いまは法律や条例が厳しく、末端の組員が重大事件を起こそうものなら、トップも使用者責任を問われて逮捕です。昔のように出頭させておしまいということにはなりません。よって、対立があっても暴力的な手段に出ることはほぼ無理です。また用心棒代などの収入もいまでは不可能になっています。つまり、存在すること自体が意味をなさないような流れになっています。という意味では、昔気質のやり方はもはや危険すぎるということになります。

しかし、そんな状況でも配下の組員を食べさせる必要はあるわけで、だったら合法、非合法を問わずに今風の方法で稼がなくてはならないという結論になるわけです。一方であまりにその方法を推し進めてしまったために、対立が生まれていくという次第です。その中でどのような決着になるのかという点が、この分裂騒動のひとつの注目点であります。これに関して、複数のライターが書いています。

一般人からは想像できない世界に住んでいる人たちの話ですが、いま読んでいる他の本でもこれからはビジネスも自動化されて多くの職業がなくなるということが書かれており、身動きが取れなくなって路頭に迷うという点では他人事ではありません。どのようにサバイバルしていくかは同じ課題です。

なお、この記事、最初は3/13に書いたのですが、その後の一週間でトラックが事務所に突っ込むなどの騒ぎが頻発していますね。内部の紛争であるうちはこの程度でおさまるが、抗争になったらもっと物騒になるというようなニュアンスを猫組長さんが書いてますね(猫組長さんについてはtwitterで検索)。

評価ですが、かなり特殊な内容だと思いますので、星3つにおさえておきます。

評価:★★★☆☆

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