本の紹介『反ポピュリズム論』

まさか、この人の書いた本を読むとは思いもしませんでした。

渡邉恒雄『反ポピュリズム論』新潮社、2012年

いまや悪名高きと言った方がしっくり来ると思いますが、もともとは頭の切れる政治記者との評判があった人です。齢86にして、非常にはっきりした語り口で、その主張は昔ながらの新聞記者といった感じです。

たびたび出てくる読売新聞の自慢話はさておき、いまの政治家がポピュリズムに陥り大局からの判断がないとの指摘はごもっともです。ただ、複雑性の増した現代で昔のように大局からの政治判断ができるかは議論の余地があると思いますが、そういう政治哲学は必要だと思います。政治に限らず、日本の教育では哲学的なことをあまりやらないから、根本的な部分でぶれるという意見は少なからずあたっていると思います。サンデル教授の本が売れるのはその証左ということを言う人もいます。という点では、渡邉氏は確固とした哲学をお持ちのようなので議論は明確です。正しいかどうかは別として。

さて、彼は過去何度か大連立をしかけたりしていますが、一方で戦時中の大連立である大政翼賛会を当時の新聞が揃って支持したのは新聞記者としては恥ずべきことと言ったり、この人ならではの部分も見えて面白いです。また、安定的多数という言葉を創ったのも渡邉氏だそうで、その辺の実力というか影響力はいろんなところに及んでいるようです。

賛否両論あるとは思いますが、保守的な立場であれば読んでみてもいいと思います。ただし、朝日新聞の読者のかたは読まない方がいいと思いますw

評価
★★★☆☆

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