本の紹介『凶悪―ある死刑囚の告発―』

事実は小説より奇なり、といったところでしょうか。

新潮45編集部 『凶悪―ある死刑囚の告発―』[Kindle版] 新潮社、2013年

何となくアマゾンを眺めていたときにレコメンドで出てきた本です。レビューで興味を持ち、サンプルを見て、即購入でした。内容が面白かったので、買った日が有休消化日だったことも手伝い、48時間以内に読み終えました。なんでいきなりレコメンドされてるのかと思ったのですが、なんのことはない、映画化されて来月公開なんですね。

内容は、とある死刑囚(最初は上告中)が自分の余罪を告白したいと獄中の仲間に相談し、その仲間と知り合いの週刊新潮の記者(単行本刊行時は新潮45に異動)に連絡がいったのが事の発端です。一緒に殺人を犯した首謀者が娑婆でのうのうと生きていて、しかも投獄前に面倒を見るようにお願いしていた自分の舎弟が自殺に追い込まれたことから復讐を誓い、警察も知らない他の殺人事件をすべてばらすという行動に出た死刑囚とのやりとりと、結果的にその首謀者を逮捕、無期懲役判決に持ち込むまでのドキュメントです。

主役たる死刑囚はまさしく極悪非道の悪人で、それまでにも殺人や殺人未遂、覚せい剤取締法違反で捕まるなど、犯罪の総合商社みたいな人物です。その言うことをどこまで信じていいのかという記者の葛藤から、取材を進めるにつれてそれが確信へと変わり、最後には真犯人逮捕へと向かう一連の流れをよく描写していると思います。

それにしても、人殺しで金儲けという非道を繰り返すなんて人間がいるんですね。しかも、獄中からの告発がなければ完全犯罪ですよ。身寄りがない資産家やら、倒産して健康も害しているが高額の保険がかけられている経営者などをうまいこと見つけて、徐々に死に追いやるというのがバレない秘訣のようです。人間関係をちゃんと保っておく事って大事ですね。

首謀者が逮捕されるきっかけになった事件は、身内までもグルになっているわけで、そうなれば警察には絶対にバレない仕組みです。そんな知恵をまともなビジネスに活かせば、それで十分儲かると思いますがね。

殺人の描写などはエグかったりしますが、下手なミステリー小説読むよりもいいかもしれません。星4つとします。

評価:★★★★☆

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