本の紹介『信じて根を張れ!楕円のボールは信じるヤツの前に落ちてくる』

ラグビー全国大学選手権5連覇の裏側に迫ります。

岩出雅之『信じて根を張れ!楕円のボールは信じるヤツの前に落ちてくる』小学館、2010年

帝京大学ラグビー部監督の選手育成方法に関する著作です。岩出監督はもともとは中学高校で教師をしていただけあって、ラグビーを強くするだけではなく教育者としての一面があるのが特徴です。「ラグビーでメシを食えるのは一握り」という現実から目をそらさず、社会に出ても通用する人材を育成することに主眼を置いているようです。

例えば、グラウンドへの来訪者への挨拶や周辺の清掃ボランティアに始まり、食事や掃除は4年生の仕事とし、その姿勢を下級生に伝える文化を作り上げています。

よくラグビー関係者のコメントにディシプリン(規律)というものが出てきます。プレーに関して言えば、攻撃や守備の決まり事です。サッカーもそうだと思いますが、ラグビーの場合にはプレーごとにいろんな状況が発生します。そういった状況に柔軟に対応できるかどうかがポイントとなるのですが、それをきっちりとやりきるためには規律を守ってパニックにならないようにする必要があります。それをいかに徹底できるかが勝負の分かれ目です。そのディシプリンを普段の生活から浸透させようという試みが清掃ボランティアであったり、上級生が雑務をするということなのです。

基本的にいろんなことは自由なようですが、根底のディシプリンがあるからこそ無秩序にならずにいい方向に向いているようですね。

ただし、それに至るまでに10年かかったそうですが、その間に部員による集団暴行という不祥事による公式戦自粛や選手の自殺などいろんなことが起きたそうです。それを乗り越えてここまで来たということですね。同じく新興校として栄華を誇った関東学院大学は、部員の大麻所持による逮捕という不祥事をきっかけに凋落、いまや2部リーグ所属の状態です。そうならないよう、今後も規律を守る文化を継承してもらいたいものです。

もうちょっと細かい話があってもいいかと思いましたが、あまり書いちゃうと手の内がバレてしまいますので、仕方なしですね。ラグビーファンというボーナスポイント込みの星4つです。


評価:★★★★☆

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